iDeCo(個人型確定拠出年金)は2001年10月からはじまった制度で、実はNISAやつみたてNISAなどよりも長い歴史があります
国民年金基金連合会の資料によると、2022年3月時点のiDeCoの加入者は2,387,772人で、前年比でも23%増加していました
最も多い属性は、第二号が全体の85%を占め、中でも企業年金なしの群が全体の過半数を占めています
(第一号被保険者:自営業者など、第二号被保険者:会社員、公務員、第三号被保険者:専業主婦(夫))

このように、iDeCoは、会社員、公務員を中心に加入者を増やし、近年では特に若年層から注目を集めている非課税制度です
さらに今年は確定拠出年金法の改正で、より幅広い方が使いやすくなるようになり、更なる注目がされています
そこで、iDeCoの制度の改正のポイントと、改正も踏まえたiDeCoのメリット、デメリットについて解説します
iDeCoとは
iDeCoは、個人型確定拠出年金のことで、自分が拠出した掛け金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です
iDecoの概要
加入資格
基本的には、20歳以上65歳未満の全ての方*が加入できます
*農業者年金の被保険者、国民年金の保険料免除者、企業型確定拠出年金に加入していて、iDeCoの同時加入を認めていない場合は除く
掛け金の上限額
第一号保険者・・・81.6万円/年
第二号保険者・・・14.4万円/年〜27.6万円/年*. *掛け金は企業年金の加入の有無などで変わります
第三号保険者・・・27.6万円/年
掛け金は5000円から掛けることができ、1000円単位で自由に設定できます
また、年1回のみ掛金額の変更ができ、掛け金はいつでも止めることができます
iDeCoの目的
投資をはじめようとされている方は、NISAやつみたてNISAにすべきかiDeCo(個人型確定拠出年金)にすべきか、それとも両方をすべきか、など迷われることはないでしょうか
NISAもiDeCoも投資による譲渡益が非課税になる制度ですが、それぞれ目的が異なっているということは、まずは知っておいた方が良いでしょう
NISAは投資によって、さまざまなライフステージ(教育、住宅や車の購入、老後など)に対する資産形成を主な目的とした設計になっています
一方、iDeCoは、主に老後の年金に対する資産形成を目的とした設計になっている点が、NISAと異なる点です
つまり、下図のようにiDeCoは、皆さん加入している国民年金、厚生年金などの公的年金に加えて、自らの意思で加入する私的年金の位置付けになります

このため、iDeCoは老後の年金として使えるような制度設計になっています
老後の年金に不安のある方はiDeCoを活用すると良いでしょう
2022年度改正のポイント
- 受給開始時期の上限が70歳→75歳へ延長(2022年4月〜)
- 加入資格が60歳→65歳へ拡大(2022年5月〜)
- 企業型確定拠出年金の加入者もiDeCoに加入が可能に(2022年10月〜)
最もインパクトのある3について解説します
これまで、企業型確定拠出年金(企業DC)に加入している会社員などは、企業のルールにより、iDeCoと同時加入はできない場合がありました
しかし、今回の改正で、下表のとおり、各月の掛け金が企業型DCとiDeCoを合わせて55,000円以内であるといった、金額の上限などの条件*の下、iDeCoとの同時加入が可能となります
*その他に、企業型DC・iDeCoが各月拠出であること、企業型DCでマッチング拠出を利用していないこと
第二号保険者の方で、事業主の掛け金では足りなくて、投資に充てることができる余剰資金がある方にとっては、魅力的な改正になったのではないでしょうか

iDeCo公式サイトより作図
iDeCoのメリット3選
①掛け金が全額所得控除
掛け金の全額が所得控除の対象となり、所得税と住民税が軽減されます
仮定)毎月20,000円の掛け金で運用、所得税率20%、住民税率10%
→72,000円分の税金が軽減される 式:20,000円×12ヶ月×(20%+10%)=72,000円
このように、税率が高い=年収が高い人ほど、節税効果は大きくなります
節税効果は最大で448,800円/年 (掛け金81.6万円/年、所得税率45%、住民税率10%の場合)
②非課税の積み立て運用期間が長い
加入期間が65歳まで拡大したことにより、20歳〜65歳まで、最大45年間の積み立てができます
さらに、受け取り開始年齢が75歳まで延長したことで、運用期間は20歳〜75歳まで、最大55年間非課税運用ができることになります
このように長期投資における「複利の効果」を効かせやすく、譲渡益に関する非課税の恩恵を受けやすい制度といえます
50歳からiDeCoをはじめたとしても、決して遅くないでしょう
③(企業型DCと比べて)豊富な商品ラインナップから選ぶことができる
企業型DCでは会社から委託を受けた運営管理機関が選定した商品に限定されますが、iDeCoは、豊富な商品ラインナップから、気に入った商品がある運営管理機関を選ぶことができます
(事例)
企業DC:三井住友信託ライフガイド・・・23本(私の勤務先の指定機関)
iDeCo:加入者数No1 SBI証券・・・87本(うらやましい・・・😖)
iDeCoのデメリット3選
①原則*60歳まで資産を引き出すことができない
前述した通り、iDeCoは老後に対する資産形成を目的に設計されています
将来のライフプランで必要な資金を抜いて、60歳まで必要のない、余剰資金ではじめることが重要です
*脱退一時金5条件を全て満たす、加入者が怪我や病気で障害を負う、加入者が死亡の場合は引き出しができる
②手数料がかかる
手数料は、掛ける金額によらず定額でかかる費用です
負担率で考えると、掛け金が少ない場合は大きな負担率になるでしょう
【手数料一覧】
新規加入時2829円(初回のみ)、事務手数料105円/月、資産管理数料66円/月、
運営管理機関手数料0円〜数百円/月(金融機関によって異なる)、運用管理費用(投資信託の場合)
③出口戦略が複雑
iDeCoは譲渡益は非課税になりますが、受け取り時に所得として認識されるため、税金が発生します
そこで、退職所得控除や公的年金等控除のルールを理解し、受け取ることで、税負担を軽減することができますが、各控除のルールが煩雑です
退職金や公的年金、iDeCoを受け取るタイミングを誤ると、思わぬ税負担をしなければならなくなる為、どのような出口戦略になるのか、各控除のルールなど知った上で、はじめた方が良いと思います
まとめ
iDeCoは、NISAよりも長い非課税枠で積み立て運用ができ、非課税枠の恩恵を最大限活かせる点、掛け金が所得控除になる点が、特に魅力的です。
また、2022年10月からは、企業型DCに加入している会社員や、公務員もiDeCoに同時加入ができるようになり、ますます第二保険者にとって、活用しやすい制度になるのではないでしょうか
一方、60歳まで原則引き出すことができないことは、大きなデメリットといえます
・企業型DC加入者で事業主の掛け金が少なくて、余剰資金がある方
・長期運用に耐えられるマインドをお持ちの方
・60歳まで使うことのない余剰資金がある方、または余剰資金を捻出し続けることができる方
近年、非課税制度の普及によって、投資が行いやすくなってきましたが、自分の投資方法にあった、非課税制度を活用すべきで、非課税制度を活用することが目的にならないように注意すべきと考えます
これから投資を始めようとされている方々やiDeCoを活用すべきか悩んでいる方々の参考になっていれば嬉しいです
質問やご意見がありましたら、コメント欄かTwitterでメッセージをいただけますようお願いいたします
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